幼い頃、空に透明な魚が浮かんでいた。
それは「本当」だったのだろうか。
ただ純粋に信じるものを見ていた、
この目が霞むたびに、どんどん曖昧になる。
どんどん、あいまいに。
どんどん、背が伸びていく。
どんどん、ぼやける。
それでも背丈がうんと伸びた頃、
クリスマスイブ、東京タワーのまわりに
透明な魚が泳いでいたのを見た。
見た?本当?ほんとう?
もう、「本当」ではなくても良いのだと思う。
体の中で、心の中で、すやすやと眠って
いつ起きても、頭を撫でてあげられる、
手を握ってあげられる。