シャッタースピードの遅い写真に映る都会は、綺麗だと思う。 車のライトが尾を引き、ビル群の光は まるで溶かした飴玉のようだ。
外は雨が降っている。 傘を忘れた誰かの薄手のダウンが 点描画のように濡れていく。
コンビニを過ぎる。 ビニール傘は700円。
一本、盗んでしまおうか。
否、僕は雨に打たれるのがお似合いだ。
迫り来る点描画に抗うことなく どうにも抵抗できなかった災難のように 少しシュンとした顔を自動ドアに写す。
都会は嫌いだ。 そのくせ、僕は中途半端な田舎者である。 川の冷たさ、海の広さ、田んぼの美しさ、 野道にやんわり沈むスニーカーを知らない。
僕が歩いてきたアスファルトは いつもきちんと整備がされていた。 当たり前として、疑うことすら知らなかった。
鎖で繋がれたスマートフォン。 お局の横で、死を悟る今日。
悪を働いてきた者の善が賞賛されるニュース。 火のないところで焚かれるフェイク。 正当化を訴え、歩道を塞ぐパレード。
真っ赤なデカダンス。 迫り来る点描。 飾られない絵画。
涙が溢れるとき、都会は綺麗だ。 車のライトが尾を引き、ビル群の光は まるで溶かした飴玉のようだ。
ヴィヨンの軽口のバラードを詩う。 「ボヘミヤの異端、フス派の過ちもわかる、 ローマ法王の権威もわかる、何だってわかる、自分のこと以外なら。」